致命傷を回避するための経営実践ノウハウ集
2023年4月3日

M&Aで事業拡大したはずなのに思ったように収益が伸びない訳とは!? (M&Aによるシナジー効果は‟PMI”が肝心)

事業承継・M&A

前回のコラムでは、PMI(Post Merger Integration)がM&Aの成立後は勿論のこと、成立前においても意識しておくべき重要なプロセスである、ということを確認しました。

今回のコラムでは、事業譲渡で来店客の多い店舗を譲り受けたものの、思ったような効果が出ずに苦戦したという企業の実例を取り上げ、M&Aによるシナジー効果について考えてみたいと思います。

 

その企業は、地方都市に6店舗と自社工場を持ち、高い技術力と信用力に支えられ、創業から60年余りに亘り営業を続けてきました。

しかしながら、昨今の顧客ニーズの変化や競争の激化から、売上が年々減少している状態で、社長としても何らかの手を打たなければと悩んでいました。

 

そうした中、コロナ禍で店舗縮小を考えている同業者の○○社から

「うちの○○店をゼロ円で譲るので引き受けて貰えないか」

との申入れがありました。

社長は、

「○○店はかなり多くの来店客があり、ゼロ円で譲り受けるのであれば、売上も増えるし当社にとっても損はない」

と判断し、とんとん拍子に事業譲渡を決めてしまいました。

 

そこまでは良かったのですが、社長は日々の業務に忙殺されており、○○店を譲り受けるための検討や準備をする時間がありませんでした。

そのため、屋号と看板は「○○社○○店」のまま、店舗スタッフの処遇も従来どおり、サービスメニューや料金も一部見直しただけ、といった状態で○○店の営業は続けられたのです。

 

中小企業診断士の私が診断業務でその企業を訪れたのは、その事業譲渡から一年半が経過したときでした。

その時には、売上は増えるどころか減少し、そのうえ○○店の家賃や賃金が重くのしかかり、事業譲渡の前より悪い経営状況となっていました。

 

さて、○○店を譲り受けることとした、この企業の社長の判断は間違っていたのでしょうか?

いいえ、私はそうは思いません。

○○店は立地も良く、3台分の専用駐車場も完備しており、スタッフの接客スキルは高いものがあります。

それに対し、この企業の△△店は、○○店から徒歩8分のところにありますが、家賃は○○店より高く、駐車場も裏手に1台分しかありません。

また、6店舗を持つこの企業は、従前より人手不足で困っていました。

もし、譲り受けた○○店に既存の△△店を集約することとし、経営・事業の統合を進めていたとしたら、この企業は、売上を増やすこと、原価や経費を減らすこと、そして人手不足の問題を解消することが出来たかもしれません。

 

つまり、M&Aによるシナジー効果とは、単に事業や会社を譲り受けただけで得られるものではないのです。(例外的にそのようなケースがあることは否定しませんが)

M&Aでシナジー効果を得るためには、戦略的な思考を持ちながら、積極的かつ着実に、経営・業務の統合(PMI)に取り組むことが重要なのです。

《代表的なM&Aによるシナジー効果》

■譲受側・譲渡側の顧客や製品・サービス等の経営資源を相互に活用、組み合わせることによる売上拡大

■譲受側・譲渡側で重複する業務・機能等の集約・統廃合によるコスト削減

 

以上、参考になれば幸いです。

翠星企画パートナーコンサルタント
飯田 良子

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