致命傷を回避するための経営実践ノウハウ集
2023年2月27日

PMI(Post Merger Integration)はM&A成立前から始まっている!?

事業承継・M&A

中小企業によるM&Aは、官民挙げての環境整備等もあり、その件数はここ数年で大きく増加しています。

その一方、件数の増加とともに、M&A成立後のPMIが上手くいかず、当初に期待していたシナジー効果が得られないなど、失敗するケースが散見されています。

PMIとは、M&Aによって引き継いだ事業や会社について、その継続や発展に向けて行う統合やすり合わせ等の取り組みをいいますが、その取り組みが上手くいかないとはどういうことでしょうか?

以下に、PMIに関する主だった失敗例を記載しました。

《経営の方向性や体制の統合》

・経営の方向性を明確に定めていなかった結果、M&A成立後、従業員の不安が募り、離職の温床となった。

・譲受側が提示した経営の方向性が、譲渡側のこれまでを否定するような内容となっており、譲渡側の経営者と従業員からの信頼を失う結果となった。

・M&A成立後、譲渡側の経営を派遣した役員一人に任せたまま放置してしまったため、譲渡側での経営が安定せず、譲渡側の役員や従業員の心が離れてしまった。

《関係者との信頼関係の構築》

・多くの譲渡側従業員が、M&Aの目的やメリット等を理解できず、M&Aに伴う従来業務の変更による負担増や不便さ等だけを感じ、モチベーションを低下させて作業効率が低下した。

・M&A直後から譲受側の「当たり前」を譲渡側に次々に導入した結果、譲渡側従業員から協力を得られず、事業の成長はおろか、今までの事業の運営すらも困難となった。

・譲渡側経営者が譲渡側を経営しているからこそ取引してもらっていた取引先について、M&A成立後に少しずつ疎遠になり、半年後取引を停止された。

《事業の円滑な引継ぎ》

・営業や生産等に関する意思決定の全てについて、譲渡側経営者の承認が必要であったところ、譲渡側経営者が退任した後に現場での判断ができずに業務が停滞してしまった。

・M&A成立後に譲渡側が事業を行う上で必要な許認可の要件を満たしていないことが判明し、事業の継続そのものが困難となった。

・譲渡側従業員が日常的にどのような業務を行っていたか、誰がどのような取引先の対応をしていたかを十分に把握していなかったところ、一部の従業員の退職に伴い、重要な技術・ノウハウや取引先を喪失した。

《事業機能と管理機能に関する業務統合》

・従前より譲渡側の月次決算の締めが遅かったが放置していたところ、業績悪化を認知するまでに時間を要し、気が付いた時には深刻な赤字決算となっていた。

・業界内の一般的な取引条件よりも不利な取引先との契約を、何ら見直すことなく継続した結果、利益率が過小な状態となっている。

・譲渡側の経営や業務に関する情報が、全て個人管理の表計算ソフトで保管されており、情報の項目や形式がバラバラであった。また、紙資料でのみ管理されている情報も多数存在していたため、必要な情報を把握するのに多大な時間と労力が必要になった。

これらの失敗例をみると、M&A成立前からPMIの意義や要点を理解してさえいれば、トップ面談や条件交渉の場面、またはデューディリジェンス(DD:事業評価・買収監査)の場面で、防げたものや対処できたものがあるのではないでしょうか。

PMI(Post Merger Integration)には、POST(~の後)という言葉が含まれていますが、M&Aの成立後はもちろん成立前においても意識しておくべき重要なプロセスなのです。

以上、参考になれば幸いです。

翠星企画パートナーコンサルタント
飯田 良子

参考資料: 中小企業庁2022年3月策定 「中小PMIガイドライン」

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/pmi_guideline.pdf

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