ビジネスに必勝法はない
ビジネスには成功の方程式のようなものはありません。
ビジネスはサイエンスというよりは、アート寄りといわれています。
論理だけでは正解を導くことはできないのです。
他社の成功事例を分析して成功要因を抽出したとしても、それに再現性があるかはわかりません。
他社と自社の状況は違います。
同じことをしても、同じように成功するとは限らないのです。
ここで1つ問題です。
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部品メーカーA社は、大量注文を受注することに長けており、規模の経済で製造単価を下げ、高い利益率で成功していた。
それを見たB社は、
「何とかウチも大量注文を取って、大きな売上を獲得したい」
と考えた。
B社は、大量に注文を取るのは得意ではないが、別な得意分野があった。
どんなに複雑な形状の部品でも注文通りに正確に作り、高い品質で顧客から高い評判を得ていた。
顧客の要求水準が高いので、どんな注文にも応えることができる職人を揃えていた。
また、一回ごとに製品の形が違うので、色々な形に対応できる汎用性の高い工作機械も自社開発していた。
難易度の高い注文なので受注単価が高く、高い利益率を享受していたが、毎回の受注量はそれほど大きくないので、売上はA社の3分の1程度だった。
ラインはまだ十分な余裕があるし、若い社員もチャレンジ精神にあふれていた。
そんなとき、B社の評判を聞きつけたある企業から、大量の注文がきた。
形状は比較的シンプルなので、それほど高い技能がなくても作ることができる。
ところが、いつもの注文は、数百個なのに、数千個という多さだった。
しかし、大量生産すれば、製品1個当たりの単価が低減するので、利益率が高まる。
B社にとっては、ちょうどA社のように事業規模を大きくしたいと思っていた矢先だったので、喜んで注文を受け、製作に取り組んだ。
さて、このB社の試みは上手くいくでしょうか?
「このあと何が起こるか」を、可能な限り想定してみましょう。
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B社の強みは、技術力のある職人と、汎用性のある機械です。
今回のように、大量受注を受けるとその強みを活かすことはできません。
確かに一般的には大量受注でコストダウンは、一つの成功要因です。
しかし、これはB社にはあてはまりません。
実際には以下のようなことが起きました。
・職人のモチベーションダウン
技術力のある職人が、簡単な作業を大量にやるという仕事に対してモチベーションが下がってしまいました。
・コストアップ
技術力のある職人は当然コストも高いです。
これらの人たちが取り組むのですから、当然製造コストは上がります。
・自社開発した機械も無駄になる
少品種大量生産であれば、様々な品種に対応するための汎用機械は必要なくなります。
せっかくの強みが活かせないということです。
・仕事と給料のミスマッチが起きる
これはかなり致命的です。
今までは技術力を活かせる仕事があったからこそ、給料が高い職人たちも若手に認められてきました。
しかし今回のような簡単な仕事であれば、
「なんであの人たち、俺たちと同じ仕事をやっているのに給料たくさんもらっているの?」
という不満が出てきます。
ここから組織が内部崩壊していきます。
今回の問題からわかる通り、自社の置かれている環境や持っている資源を踏まえたうえで、自社ならではの正解を考える必要があるということです。
また、もう一つ重要なことをお伝えします。
自社が過去成功したやり方と同じやり方で取り組んだとしても、再度成功するとは限りません。
過去と現在では市場や競合といった外部環境が変化していますし、内部の経営資源も変わっているはずです。
こうした変化を無視して、過去の成功体験にとらわれてしまうというのは、失敗の典型例ですのでご注意ください。
どんなビジネスであれ、100%成功するなどということはあり得ません。
いかに成功率を上げていくか、失敗率を下げていくかです。
そのためにはできることをしっかりやる。
リスクをきちんと管理する。
面白味はないかもしれませんが、結局はこういった当たり前のことが、当たり前にやれるかどうかなのではないでしょうか。
以上、参考になれば幸いです。
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