運転資金について知っておきたいこと(Vol.5) ~増加運転資金が会社を潰す?~
「運転資金について知っておきたいこと」シリーズ
・「運転資金について知っておきたいこと(Vol.1) ~基本的な考え方~」
・「運転資金について知っておきたいこと(Vol.2) ~業種別の運転資金その1~」
・「運転資金について知っておきたいこと(Vol.3) ~業種別の運転資金その2~」
・「運転資金について知っておきたいこと(Vol.4) ~事業に必要となる資金の計算方法~」
繰り返しになりますが、運転資金とは、売上と入金のタイミング、仕入れと販売のタイミングが違うために必要となる資金のことです。
計算式は以下の通り。
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 – 仕入債務
売上債権・・・売掛金、受取手形等
棚卸資産・・・材料、仕掛品、製品、商品の在庫等
仕入債務・・・買掛金、支払手形等
今回は売上急成長で絶好調の時にこそ注意が必要な増加運転資金について書いてみたいと思います。
ちなみに私が過去に経営に失敗した時の理由の1つに、この増加運転資金についての理解が足りなかったことがあります。
売上がどんどん増えているということは、ビジネスが順調ということであり、売上の数字だけ見ていると、つい気が大きくなってしまいがちです。
しかし、通常、売上が増えると運転資金も増加します。
売上アップにより増える運転資金を増加運転資金と呼ぶのですが、この増加運転資金のことを考えずにむやみに売上アップに走ると資金繰りがショートします。
例えば、以前にも例に出した以下のような卸売業の会社があるとします。
月商:100万円
売上原価:70万円
商品在庫:50万円(在庫期間0.5か月)
売掛金:100万円(回収期間1か月)
買掛金:70万円(支払期間1か月)
この会社の運転資金は以下の通りです。
100万円(売上債権)+ 50万円(棚卸資産)- 70万円(買掛金) = 80万円
この会社が仮に売上が急に倍になったとしたら、運転資金は以下のようになります。
(売上金額以外の条件は一定とします)
200万円(売上債権)+ 100万円(棚卸資産)- 140万円(買掛金) = 160万円
この会社の場合、売上が倍になることで得られる粗利益は30万円アップの60万円です。
しかし、運転資金は80万円アップの160万円になります。
これは何を意味するかというと、利益のアップ分だけでは、運転資金を賄いきれないということです。
現預金に余力があればよいのですが、ギリギリで回しているとあっという間に資金ショートです。
売上が倍になったのにお金が足りないのです。
ですので、運転資金が必要な業種の方は特に、売上の急拡大にはご注意ください。
そうはいっても、せっかくビジネスが好調なのにブレーキをかけるのかというお話もあります。
そういう時に金融機関からの融資を活用するのです。
次回エントリーでは融資を受けながら事業拡大していくことについての説明をしたいと思います。